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【人生にゴリゴリに役立つ本のみを紹介する #10】新しい世界 世界の賢人16人が語る未来

 

コスパがいいものが好きではない、という人間が果たしているだろうか。
私だ。
おい。

いや、好きではないというのは正しくない。
コスパ重視でいることに効率の悪さを感じるのだ。
値段が高いものが必ずいいわけではないが、値段を気にしてないで選んだものの方が圧倒的にいい、という身も蓋もない事実が41歳の私を襲う。
うまい話はある。が、少ないのだ。
だから、「お安くいいもの」を探して追う時間と手間がもはや惜しい。

なんせ残りの人生がリアルに少ない。

そんなに大きなフォントにしなくても。
いやでも本当に。人生絶賛折り返し中。
こうなると、最初からパフォーマンスを追う方が楽。結果コストが低ければハッピーだが、ゴリゴリにパフォーマンス重視で生きていく。

と、思ったんですけど、やっぱりコスパのいいものっていいよねぇ〜!!
と情緒不安定になってしまったのが、今日ご紹介する本である。

新しい世界 世界の賢人16人が語る未来 (講談社現代新書)

頭がいい人の考えていることってできれば知りたいですよね。
頭がいい人の考えを知ったからって自分の頭が良くなるわけではないですが、頭がいい人の話って「一種の栄養素」というか、摂取しておくことで、少なくとも視野と思考力の低下を防ぐ効果はあると思うんです。オメガ3感覚で摂取したい。

でも、頭がいい人って誰?って思いませんか?
抽象的すぎる。
経済学的に頭がいいのか化学的に頭がいいのか心理学的に頭がいいのか哲学的に頭がいいのか芸術学的に頭がいいのか羽生さん的に頭がいいのか。
そこから調べてあたりをつけないといけない。

そこでオススメしたいのが、『新しい世界 世界の賢人16人が語る未来』です。

タイトルで言っちゃってますから。
世界の賢人って。あっちゃこっちゃ調べる手間が省けました!!

ベスブレ本で頭がいい人の考えに触れよう

しかも16人ですよ、16人。
頭のいい人の詰め合わせ。
ベスコスならぬ、ベスブレ(ベストブレイン)。

本書を一言で形容するならば、世界最高の知性と洞察力を兼ね備えた、いわば「21世紀の賢人」たちがそれぞれの専門分野の立場から世界のいまを分析しつつ「世界のこれから」について論じた一冊と言えよう。

世界最高だって!うひょー!
ベスブレに触れるには、これを読んでおけばとりあえず間違いないやつなのです。
なんといっても、2021年の1月に出版された本なので、進行形でブイブイいわせている賢人の集結が確約されています。
実にコスパがいい(湯川風)。

あなたの推し賢人は誰だ!?

さすがに16人も賢人がいると、「この賢人なんか好きだな♡」っていう推しが出てきます。
反対に「この賢人の言ってることはなんか合わないなぁ」という気持ちを抱く人も出てきます。

ベスコスだって、さすがベスコスだな!ってものがあれば、なぜここまで絶賛されているんだ…?というものもありますよね。
そこもまた醍醐味。
もともと知っている賢人が出てくるとはしゃいじゃったり、この本で知った賢人の別のインタビュー記事を他のとこで見かけると読むようになったり。
コスパよく世界が少しだけ広がるから。
ぜひあなたも推し賢人を見つけて欲しい。

ヒツコス的賢人一言レビュー

それでは、ヒツコスが賢人16人に対して、簡単にレビューを書いていきます(どういうこと)

第一章 コロナと文明

ユヴァル・ノア・ハラリ「私たちが直面する危機」

歴史学者・哲学者。イスラエル生まれ。
あの「サピエンス全史」の著者と言えば伝わりやすいでしょう。

各国政府や国際機関は大規模な社会実験を実施することになる、それが数十年先の世界のかたちを決めることになる、とハラリさんは語っています。
一部の専門家が検討していた、ユニバーサルベーシックインカム(最低所得保障)だって、地球上のほとんどすべての政治家は、素朴で非現実的な考えだ、限定的にでも実験することを拒んでいたが、今は保守的なアメリカでさえ支給することを決めた、と。
一部の専門家=ひろゆき?

エマニュエル・トッド「パンデミックがさらす社会のリスク」

歴史人口学者・家族人類学者。フランス生まれ。
ソ連崩壊、リーマン・ショック・イギリスのEU離脱などを予見した学者さんだそうです。

「文化が似ていると死亡率も(コロナ)似てくる」という話の入りがめちゃくちゃ面白く、推し賢人になりました。
個人主義的で自由な文化の国々(英米やラテン諸国)はパンデミックの被害が大きく、権威主義的な伝統がある国々(日本、韓国、ベトナム)や規律を重んじる国々(ドイツ、オーストラリア)はさほどでもないというトッドさんの分析。
しかし、被害の大きかった国々が長期的に見れば他の国よりも失敗しているわけではないそうです。
なぜかとういうと、前者の国々の出生率は1.8に対し、後者の国々の出生率は1.5なんですって。
国の存亡を決めるのは出生数であり、特定の死因の死者数ではない、と言い切っておられます。
視点がでマクロで気持ちがいい!

また、ロックダウンについて聞かれた時には、トッドさん自身がご高齢で健康状態もそれ相応なので、ロックダウンは良くなかったとは言いづらい、と答えています。
めちゃくちゃ自分のことで気持ちがいい!

国の存亡と自分の存亡。どちらに対しても現実的で正直!信頼できる!

ただし、やはり視点はマクロに戻り、そろそろ外出を再開すべきで、高齢者を救うために若者や現役世代の生活を犠牲にすることもできないとおっしゃっています。
なるほど、考えさせられますね。

政治の問題については、そもそもフランスでロックダウンが必要になったのは、政権が公衆衛生面での備えを縮小していたことにあると指摘されています。エイズや狂牛病やSARSなど警告はあったのに、疫病流行のリスクを前提に体制を整えてこなかったからだと。
この国(フランス)が倒れずにすんだのは、トラック運転手、スーパーのレジ係、看護師、医師、教員のおかげで、金融マンや法律を操れる人ではなかったと語っているところにはぐっときてしまいました。

ベーシックインカムについてもキラリと光るトッド節を見せてくれるんですよ。
「問題は物資の生産」。
グローバル化というゲームに全面的に参加してしまったおめでたい国々が、産業力と医療制度を犠牲にしてしまったと。フランスは愚かとまで言っていました。いやーなんだかこっちも耳が痛いです!!

もうですね、トッドさんのインタビューは全部抜き出したいぐらい素晴らしいのでぜひ読んで欲しいですね!

ジャレド・ダイアモンド「危機を乗り越えられる国、乗り越えられない国」

生理学者、進化生物学者、生物地理学者。アメリカ生まれ。

ダイアモンドさんのインタビューはがっつり日本について語っていますよ!
痛い、痛い。耳が痛い。
痛すぎるので書けません!読んで!

フランシス・フクヤマ「ポピュリズムと『歴史の終わり』」

政治学者。アメリカ生まれ。

トッドさんのインタビューではグローバル化の功罪の罪の方のお話がありましたが、フクヤマさんは、脱グローバル化があるとしても程度の問題だと話しています。
なんか全体的につまんないインタビューでした。
次に出てくるスティグリッツさんと折り合いが悪いようでそこだけはちょっと面白かったです。

第二章 不透明な世界経済の羅針盤

ジョゼフ・スティグリッツ「コロナ後の世界経済」

経済学者。アメリカ生まれ。

スティグリッツさん好きなんですよ〜。
好きっていうか、『PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)』が私の昨年読んでよかったベスト10に入っていて、すごい面白かったんですよ。
で、このインタビューも面白い!!
短めですけど、しっくりくるぅー。
スティグリッツさんは一貫して、政府と一部の大企業だけに富が集中するアメリカの資本主義と格差拡大について警鐘を鳴らしているのですが、コロナに関しても、人命よりも企業を救うことを重視する政府の姿勢について言及しています。

ナシーム・ニコラス・タレブ「『反脆弱性』が成長を助ける」

レバノン出身。

タレブさんも好きなんですよ〜ー!けっこうずっと追ってますね。
タレブさんだけハッキリ何かの学者ってわけじゃないんですよね。
元々は数理系トレーダーをやっていて、著書の『ブラック・スワン』『反脆弱性』が世界的に大ヒットした文筆家という説明があってるんでしょうか。

ナシーム・ニコラス・タレブって名前がもうかっこいいですよね!
ナシーム・ニコラス・タレブ!言いたい!
あと、タレブさんがかっこいいのは、「反脆弱性」という用語を世に生み出したこと。現在あらゆる分野の学術論文で引用されている用語だそう。

反脆弱性とは、適度なストレスを受けることで、巨大で予期せぬ衝撃に耐える力のこと。
けっこう普通のことを言っているような気がして、逆に意味がわかりませんよね。私も追ってるわりによく分かってません。でもノーランの映画のような魅力があって面白いんですよ!

エフゲニー・モロゾフ「ITソリューションの正体」

テクノロジー評論家。ベラルーシ生まれ。

ナオミ・クライン「スクリーン・ニューディールは問題を解決しない」

ジャーナリスト、作家、活動家。カナダ生まれ。

まーーーつまんなかったです。

第三章 不平等を考える

ダニエル・コーエン「豊かさと幸福の条件」

パリ高等市販学校経済学部長。チュニジア生まれ。

コーエンさんの著書にある「幸福とは義理の兄弟より多く稼ぐことだ」という一文にフォーカスをあてるところから始まるインタビュー。※皮肉としての幸福の定義ですよ
つかみはオッケー!!
「人、とは」という根源的なことを改めて考えさせられるめちゃくちゃ面白い内容でした!

ヒトは社会で生きることを尋常でないほど切望する動物で、人にとっての成功とは、何か絶対的な基準があるわけではなく、つねにほかの人と比較してのこと、だそうです。別にそれは恥じることではない。
私もそう思います(余計なのっかり)
良い悪い、ではなく、「そういう生き物」だとまず認識することが大事なんじゃないかなぁと常々思っています。生態を理解して、臭いものに蓋ではなく、なるべくエゴと健全に共存していく術を身につけたい。
自分はそういう生き物じゃないと大いなる慢心と欺瞞の元の、人と自分を比べるのは下品な人間、人の目を気にするのは弱い人間という論調がゲー吐くほど嫌いです。

《むしろ問うべきなのは、なぜ資本主義の世界では、幸福の比較がお金という尺度だけに集中するのか》ということだとコーエンさんは言っています。
いやね、ちょっとコーエンさんとは酒を酌み交わしたいですね。

「コーエンさんは幸福になるために何をしていますか?」という素晴らしい質問があるんですけど、その答えのためだけにこの本お金払う価値があると思いましたね!!
特別に書き出しちゃいますよ…。お金ちょうだい…。

人とともに生きること、信頼できる友人を持つこと、ほかの人との競争をできるだけ敵意のないものにすること。

うぉぉーーー!!!コーちゃーん!!!一緒に酒飲んでくれ〜!!
できるだけ、と言うところに思慮深さと聡明さを感じさせます。
その上で、幸福は報酬であり目標ではないとも仰っています。
刺さるー!!!
コーエンさんの著書は絶対読もうと思いました。

視点が全体的に社会と人に丁寧で人間的に優れた人なんだなーってことが伝わってきました。
優秀な経済学者を育てた実績があることでも知られていて、教え子にはノーベル経済学賞をとったエステル・デュフロがいるらしい!知らんかったけどそりゃ納得!
だってコーエンさん優しいもんね。ぜったいいいところ伸ばしてくれる…。
なんとなんと、ネクストインタビューのトマ・ピケティもだって!!(順番がイカすぜ!!)

トマ・ピケティ「ビリオネアをなくす仕組み」

経済学者。フランス生まれ。

ビリオネアをなくす仕組み。
吸い寄せられすぎるテーマ。
おおぉっなくしちまえなくしちまえー!と私の中の庶民が手を上げて叫びます。
まぁ、中も外も100%庶民しかいないんですが。

ピケティ監修の映画もあります! 『21世紀の資本』

えーと、すみません、ここで悲報です。
Kindleのアプリに突然不具合が起きて、読み込めなくなってしまいました…。
読み直しながらじゃないと残りの賢人のレビューが書けない為、タイトルだけ置いておきます。
あ!次デュフロじゃん!

エステル・デュフロ「すべての問題の解決を市場に任せることはできない」

第四章 アフター・コロナの哲学

マルクス・ガブリエル「世界を破壊する『資本主義の感染の連鎖』」
マイケル・サンデル「能力主義の闇」
スラヴォイ・ジジェク「コロナ後の偽りの日常」

第五章 私たちはいかに生きるか

ボリス・シリュルニク「レジリエンスを生む新しい価値観」
アラン・ド・ボトン「絞首台の希望」

頭がいい人の考えを知りたい、頭のいい人が誰なのかも知りたい

以上、16名の賢人ズでした!
一人一人の尺は長くないんですけど、インタビュアの質問の質がすごく高いので、尺としてはあっさりなんだけど、適度に芯を食った内容なんですよ。
めちゃくちゃ気になる!って賢人が見つかったら個別の著書を読めばオーケー。
一人の賢人の観点にどっぷりハマる前に、次の賢人に移るとこがこの本の最大の魅力です。
世界のベスブレに満遍なく触れるのに、こんなにコスパが良い本は他にないでしょう。

あと、「隣の芝生は青い」ということもよく分かる本です。
良く見えているあの国のあんなところも、視点を変えれば、ひとくちに良いところと言えない複雑な背景があるなと。これはどこの国もお互い様なんでしょう。
読み終えた時に、少しでも視野が広く、視点が多角的になっていれば、本の意義、ここにあり。