【漫画×仕事】なりたい者があるとはどういうことか(後編)
本日は、シュシュさん=戯あひさ先生のインタビュー後編です。
前編では、漫画家さんになるまでの並々ならぬ想いをお聞きしました。
戯あひささん
フリーの漫画家。
少女漫画、女性向け、エッセイ、TLなどのジャンルで活動中。
Book:イジワル同期ととろ甘同居・あさってビューティー
令和の漫画家さんワークってどんな感じ??
ーーこれまでの漫画家としての仕事のペース(副業時代など)、現在の仕事の平均的なペースを教えてください。
あひさ先生:副業だったときは、帰宅後の時間と休日は全部漫画、という感じで相当キツかったです。
365日本当に休んでませんでした。倒れたときくらいかな。始めたとき~数年前までは、一日13時間365日お仕事入れられるだけ入れてました。連載3本以上抱えたあたりから、人間って何が何だかわからなくなるんだなーと知りました(笑)
30代後半になってから、それが全然できなくなっちゃって。連載は2~3本、労働時間は一日8時間、月一回くらい15時間、休みは週一で取れるようにしています。
あと、スキルアップのための時間も取るように、やはりこちらも数年前から意識しています。前回と同じ自分のまま、次回作に取り組んでも、勝率が下がってしまうので。それが一日30分~1時間くらいです。
ーー電子書籍と紙の書籍についてはそれぞれどのようなスタンスをお持ちですか?
あひさ先生:私は今は、電子中心でお仕事させて頂いているのですが、紙デビューなこともあって、しばらくは紙にすごくこだわってました。
でも、今は電子も成熟して、紙に負けない作品もたくさん出てきていますし、私自身、大ファンの作家さんもいらっしゃいます。電子書籍からのドラマ化・アニメ化も盛んになってきました。
なので、今は、「紙にしても大丈夫」+「電子のときにちゃんと読みやすい」「電子のみの読者さんに届く工夫」両方意識してやっています。
※「イジワル同期ととろ甘同居」より
ーーなるほどー! 媒体が拡大した分、今の漫画家さんにはそのような工夫が必要とされるんですね。
あひさ先生:はい。具体的には、少し専門的なお話になってしまうのですが、紙になったときのため、「左右のノドには大事な絵を入れない」「ふきだし・描き文字・大事な絵は基本の枠内に収める」「見開きになったとき、かぶりのないような構成にする」「左ページの左上のコマに、なるべく目を引くシーンを入れる」「2pに2コマは背景を入れる」といった具合です。
電子の読者様に楽しんで頂くための工夫として「ゴチャゴチャしすぎず見やすい画面にする」「ふきだしの中のセリフは、簡素にする」「2p前のことは覚えてもらえてないという意識で構成する」「顔を見せることを紙のとき以上に意識する」「リッチ感が出るよう、髪や瞳の線数はしっかり出す」「1コマ1コマで魅力が出るようにする」このあたりを意識しています。
読者様の目は、年々レベルが上がられていますので、それに追いつけるよう精進しています。
私の場合は、「思い切って電子に振る」というよりは、「両方対応できるような作りにしている」という感じです。
電子全振りだと、また違った工夫になってきます。そちらも勉強しています。「読みたくなるような絵」が何より大事だと感じています。「読みたくなるような絵」は奥深いので、今後もずっと考えて練習していきます。
ーー漫画を描くにあたって得意なことと苦手なことってなんですか?
あひさ先生:タイトルはよく褒めて頂けます。あとモノローグはこだわってます。苦手なことは絵ですね……。
ほんと、武器になるような絵が描けるようになりたいです。
ーーこういう人は漫画家に向いていないかもと思う人は?
あひさ先生:やり遂げる力がない人でしょうか。漫画を24p仕上げるって、実は正気の沙汰ではないんですよ。それができるかどうか、それができるのであれば、あとは頑張り次第で絶対なれると思います。
ーー漫画家を目指す人へオススメの具体的道筋を教えてください。
あひさ先生:なりたい作家像があるなら、今自分に力がなくてもそこをまっすぐ目指せばいいと思います。
今は指南動画も充実しています。絶対どうにかなります。
「今自分にできること」で目指しちゃうと、デビューはできるかもしれないんですけれど、ちょっとメンタル面が厳しくなってしまいます。メンタルに自信があれば、それもありです。
道筋としましては、どんな作家になりたいか、どんな作品を発表したいか決める、それに向けて指南書や指南動画や指南画像を漁る、実直に努力を継続する、持ち込みかツイッターなどSNSで発表するなど具体的行動を起こす、その結果のフィードバックを受けてまた努力か行動を起こしていく。これでなれるんじゃないかと思っています。
ーー漫画家になって良かったと思うこととしんどいと思うことはなんですか?
あひさ先生:絵を描く、漫画に向けて努力する、ということが、生活を良くする努力に直結しているのは、めちゃくちゃありがたいです。
しんどいのは、永続的な努力と痛みが約束されてしまっていることです……。気づいたとき「一生この努力が続くのか…ひえ…って」と膝から崩れ落ちました(笑)
あひさ先生の漫画創作ツールのFAはこれだ!
ーー漫画を描くにあたり、これは欠かせない! というFAツールがあれば教えてください! 直接的なツールでもおやつや飲み物などリフレッシュアイテムでも!
あひさ先生:はい! このようなものがあります。
作画用のワコムの板タブ
液晶タブレットより、猫背にならないので、美容と健康が気になる方には、板タブがオススメだったりします!
液晶タブレットは描くのが早くなるというメリットが人によってはあるのですが、やはり肩こりに悩まされる方も多い印象です。
作家を長く続けたい場合、板タブはかなり有効なのではないでしょうか。
ネームの時用の無印の100円のシャーペン
ネーム(漫画の下描きの下描きみたいなもの)は、無印のものが使いやすくて、絶対これを使うようにしています!
シャーペンが使いづらいと、ネームの進みに引っ掛かりが出るので、ちゃんとこだわりたいところです。
先日、使いすぎて、シャーペンがバラバラになったんです(笑)
シャーペンがバラバラになるなんてことあります!? って驚いてしまいました(笑)
ペイントソフトSAI
私がデジタル作画に移行できたのは、SAIのおかげ……というくらい描きやすいペイントソフトです!
機能はクリップスタジオのほうがいいのですが、描き味が抜群すぎて、いまだにメインはSAIです。
ただ、「今から漫画始めるよ」という方は、絶対クリップスタジオから始めたほうがいいです。
「便利さ」のFAというよりは、「デジタルの苦手を克服してくれる」FAです。
と、物理的なFAはこんな感じなのですが…。
今となっては欠かせないものが出てきました。
最強酵素こと、ビューティフローラ
創作の上で、本気で手放せないのが、最強酵素こと、ビューティフローラです!
これを飲むと、本当に元気になって、前向きに創作できるんです。
初めて飲んだときは衝撃でした。
酵素は、消化と代謝に使われるのですが、だいたい消化にまわってしまって、代謝に使われないんですよね。
ビューティフローラを飲んで、いかに酵素が足りなかったかを思い知ったし、代謝に酵素を回せると、こんなにも元気になるんだと感激しました。
2週間ほど間をあけた時期があるのですが、本当に元気がなくなっちゃって。漫画を描くスピードも落ちるし、楽しくアイディアも出せないんです。それ以来、絶対これだけは切らさないでおこう、と決めました(笑)
酵素は漫画力をもアップさせてくれます……!
筋トレと歩行瞑想
あとは筋トレと歩行瞑想ですね。
30代前半までは、アドレナリンで頑張れたんですけど、30代後半からは、瞑想と運動が必須になりました。
健康という土台がないと、満足いく漫画を生み出せないんだ、と思い知って、ちゃんと体を動かす時間を取るように変えました。
※「イジワル同期ととろ甘同居」より。これらのツールによって出来上がっているのだ…!
「好きなことで生きていく」とは「好きなことを嫌いになるまでやりこむ」こと
ーーあひさ先生が考える「好きなことで生きていく」とはどういうことですか?
あひさ先生:城崎仁さんがテレビか何かで「ホストがここまでキツイと最初からわかっていたら、絶対やってなかった」とおっしゃっていたのですが、漫画家も似たところがあります(笑)
ここまでキツイと知っていたら、飛び込めたかどうか……。
また「好きなことで生きていく」って、「好きなことを嫌いになるまでやりこむ」ってことなので、好きだけじゃなくなっていきます。
好きということは得意ということだと思うのですが、自分の一番の得意をお仕事にすると、逃げ道もありません。
できていないところを見つけては、できない痛みを真正面に受け止めながら改善する、という繰り返しがひたすら続きます。
しかもその努力は外から見えません。仲間を見つけて、支えあうしかないし、それができるのはだいぶん幸福です。
でもやっぱり、好きなことをずっとできるのはありがたいですし、やりたくてもできなかったことをクリアしてできるようになるのは、生きている実感がすごくあります。
「好きなことで生きていく」ここまでの覚悟があるのなら、飛び込むのもひとつです。
ーー最後に漫画家としてのこれからの目標を教えてください。
あひさ先生:少年漫画家志望なので、それに向けて小さい努力と行動を積み重ねております。
また、現在のお仕事でもきっちり結果を出せる作家になるよう、基礎からみっちりやり直してます。
当面の目標は、絵が魅力になっている漫画を作成できる作家になることです。精進します。
ーーあひさ先生の少年漫画デビュー、楽しみにしています。その際はぜひまたインタビューをさせてください! 本日はありがとうございました。
インタビュー後記:漫画家さんを目指す方はもちろん、現在漫画家さんの方にも、いやいや異業種の私でも身が引き締まり爪の垢を煎じて最強酵素に混ぜて飲ませていただきたい内容。
個人的には〝「好きなことで生きていく」とは「好きなことを嫌いになるまでやりこむ」こと〟という言葉がリフレインしています。
これって厳しい現実でありながら、ある種すごく救いにもなるなぁと思うんです。
好きなことや得意なことを仕事にすると、きっといくつも出てくるであろう「好きなことのはずなのに……」という壁。
それこそが、前編のインタビューでお伺いした、「やりたいこと」と「なりたい者」の間にあるものなのではないかと思います。
あひさ先生のお話から、その壁は至極真っ当にそびえるもので、自分に疑いをもったり諦めたりするためのものでは決してないと強く感じました。
あひさ先生の作品はこちらです! ぜひチェックしてください!
イジワル同期ととろ甘同居
あさってビューティー